令和6年能登半島地震復興応援特別展 「七尾美術館 in れきはく」
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能登地区唯一の総合美術館である石川県七尾美術館は、平成7年(1995)の開館から約30年、能登の文化活動の拠点施設として広く親しまれてきました。しかしながら、同館は令和6年1月1日の能登半島地震により建物・設備に被害を受けて臨時休館中となっています。
本展は同館が石川県立歴史博物館と共同で企画するもので、七尾美術館の所蔵品および寄託品を3つのテーマで広く紹介します。七尾美術館が地域との関わりの中で大切に守り伝えてきた作品群が、金沢で一堂に展示されるのは初めてのこととなります。その魅力に触れ、能登の豊かな歴史・文化を再確認する機会となれば幸いです。
チラシ(PDF:1.28MB) 出品一覧(PDF:632KB)
【石川県七尾美術館とは?】
石川県七尾美術館は七尾市出身の実業家・池田文夫氏(1907~87)が生涯をかけて収集した美術工芸品がご遺族により七尾市に寄附されたことをきっかけとして、美術館建設の機運が高まり、設立されました。また、「能登ゆかりの作家・作品の紹介」も大きな柱であり、七尾出身の桃山時代の絵師・長谷川等伯(1539~1610)を重要なテーマとして位置づけました。平成7年の開館以降は毎年テーマを変えて「長谷川等伯展」を開催しています。
さらに、「能登地区唯一の総合美術館」として、長谷川等伯展のみならず、秋には世界中から応募される絵本原画コンクールの入選作品を紹介する「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」、浮世絵や地域に守り伝えられてきた文化財に関する展示、県内最大規模の公募展「現代美術展 七尾展」など多岐にわたるジャンルの展覧会を行ってきました。また、市民ギャラリーでは美術団体などの創作活動を発表する場を提供し、地域の方々に開かれた美術館であることを目指しています。
【展示内容と主な展示品】
1章「伝えゆく池田コレクションの逸品たち」
やきものや漆工、近現代作家による日本画や彫刻など幅広いジャンルで構成される「池田コレクション」。ここでは現在289点が収蔵されている同コレクションより、選りすぐりの優品を紹介します。
【池田コレクションについて】
池田文夫氏は七尾市に生まれ、戦後間もない昭和23年(1948)に岐阜県大垣市で紡績会社を設立しました。中部石川県人会会長、日本経営者団体連盟常任理事など重職を歴任し、中部地方きっての経済人として幅広く活躍する一方、若い頃より美術品をこよなく愛し、ジャンルを問わず多くの作品を求めました。氏の美術品に対する姿勢はあれこれ難しく考えるのではなく、気に入った作品にふれることが何よりの楽しみであったといいます。
昭和63年および平成7年に、「志野」「織部」といった池田氏の活躍した岐阜県の「美濃焼」など茶道具を中心に、近現代作家の日本画や彫刻などを含めた147点が寄附され、コレクションとしての歩みが始まりました。そして、平成17年には開館10周年を記念して宮川長春「雪中美人図」などの肉筆浮世絵や、澤田政廣「不動明王像」といった木彫作品など23点が寄附されました。次の大きな寄附は平成23年のことで、「根来」を中心とした漆工や重要美術品「後奈良天皇和歌懐紙」など34点が加わり、コレクションはますます幅広いものとなっていきます。開館20周年を記念した平成27年の寄附(計83点)では、石川県を代表するやきもの・九谷焼をはじめとして「備前」や「唐津」、金沢出身の金工家・高橋介州の加賀象嵌作品や肉筆浮世絵、彫刻、木工芸など多彩なジャンルが仲間入りしました。平成29年にも2点の追加寄附を受け、現在その数は289点となっています。
七尾美術館ではこれらの作品を所蔵品展などでテーマを変えながら紹介しています。
根来は中世に繁栄した紀伊国(現・和歌山県)の根来寺に由来する漆器で、仏具や僧侶の日用品などが制作された。本作は湯桶と呼ばれる、湯や酒を注ぐための食器の一種。円筒型をし、胴の上下には箍(たが)のような輪をめぐらす。鶴首を思わせる曲線の注ぎ口と大きな入り隅の提手が付く。力強く明快なフォルムと、長年の使用で表面の朱漆が摩耗し、所々に表れた黒漆とのコントラストに、根来ならではの味わいが感じられる。
織部は桃山時代に美濃国(現・岐阜県)で制作された美濃焼の一種で、造形や文様などに見られる意匠の奇抜さ、自由闊達さが特徴。本作はアワビを模った向附(茶事などで使用される懐石道具のひとつ)。銅緑釉を片身替わりに掛け、見込には鉄絵で波とサザエのような文様を描く。器形から文様まで「海づくし」といった趣で、織部の多様な意匠をよく表している。
宮川長春は尾張国(現・愛知県)出身という浮世絵師。肉筆画を専門とし、菱川師宣や懐月堂風の美人画・風俗画をよくし、「宮川派」の祖となった。しんしんと雪が降り積もる中、禿を伴った遊女が道中する姿を描いた作品。特に遊女の着物は緻密かつ流麗な線で描かれ、文様も実に色鮮やかだ。背景には雪の積もる梅枝と土坡をわずかに描くばかりで、静けさの中を威風堂々と歩く彼女の美しさをいっそう際立たせている。
2章「長谷川等伯と能登の文化」
七尾出身の桃山時代の絵師・長谷川等伯(1539~1610)は、七尾美術館の重要なテーマの一つです。ここでは等伯の若き頃、信春時代の仏画を中心に展示します。あわせて等伯が絵師として大成しえた要因のひとつである「能登畠山文化」や能登地域に伝わる文化財などを紹介します。
【長谷川等伯について】
長谷川等伯は天文8年(1539)に能登国・七尾で武士の奥村家に生まれました。その後染物屋を生業とする長谷川家に養子に入り、はじめは「信春」の名で絵仏師として能登地域を中心に活躍します。
33歳頃に活動の拠点を京に移して画技を磨き、また、一流の文化人と親交を深め名声を高めていきます。その勢いは当時京都を席巻していた狩野派も脅威に感じるほどでした。国宝「智積院障壁画」(元・祥雲禅寺障壁画)は当時の天下人・豊臣秀吉の依頼を受けて制作されたもので、江戸時代の史料には「大小あわせて93面」とあり、等伯のみならず一門総出での大事業だったと分かります。色彩豊かな仏画から始まった等伯ですが、後年、特に50歳代以降は水墨画による作品が増えていきます。日本水墨画の最高傑作、国宝「松林図屏風」などさまざまな名作が伝わっています。息子・久蔵や理解者であった千利休の死などの悲劇にも見舞われた等伯。豊臣から徳川へと時代が移り行くなかで、新たな活躍の場として江戸を目指しましたが、慶長15年(1610)、江戸到着の2日後、72歳でその生涯を終えたと伝わります。
京都・愛宕山朝日峰に鎮座する愛宕権現は、蓮華三昧経に説かれ、火伏せの神として祀られた。本地仏は勝軍地蔵で、鎌倉時代以降人びとの信仰を集め、特に武将の信仰が盛んであった。本作は火焔を背にして甲冑を身に着け、右手に2本の戟を持して左手に如意宝珠を載せ、正面を向いた葦毛の馬に騎乗するという勇ましい姿で描かれている。画面右下に「信春」袋形印が捺されており、手などの表現から30歳代前半頃の制作と考えられる。
一見すると絵画に見える本作は、阿弥陀三尊像を刺繍で描いた繍仏と呼ばれる作品。華足付の豪華な蓮華座に座し、胸前で印を結ぶ阿弥陀如来と右側に観音菩薩、左側に勢至菩薩を配す。刺し繍を基本としつつも、各所に留め繍や返し繍といった技法も用いており、濃紺・青・緑・黄・赤など多彩な色糸を駆使したグラデーションも美しく、専門の工人の手になるものであろう。本作は従来鎌倉時代の制作とされてきたが、平安時代仏画の趣があること、また平安末期の繍仏作品と技法上の類似点が見られることから、最近では平安時代後期~末期頃に制作されたとする見解もある。
「連歌」は短歌から派生して誕生した詩の一形態。短歌の「上の句」と「下の句」を、それぞれ複数の別人が交互に詠む形式を採る。「応仁の乱」以降は地方への文化伝播に伴い、連歌は各地の大名たちにも親しまれるようになった。室町時代中期から戦国時代末期まで約170年間にわたり能登国を統治した「能登畠山氏」も文芸活動を重視し、盛んに連歌の会を挙行している。その一端を示すのが本作で、第七代・義総の治世で行われたものである。打雲の料紙に優美な文字がびっしりと書され、典雅な風情に満ちあふれている。
3章「能登ゆかりの現代作家たち」
七尾美術館の所蔵品は「池田コレクション」と「能登ゆかりの美術工芸」に大別することができます。七尾美術館ではこれまで、さまざまな場面で活躍されている作家をはじめ、多くの個人・団体から作品の寄附を受けてきました。本テーマでは七尾美術館所蔵の現代作品のうち、能登出身・在住の作家や、能登の風景をテーマにした作品をセレクトし、豊かな能登の土壌が生み出した現代作品をご鑑賞いただきます。
高田博厚は七尾市出身の彫刻家。早くから芸術や哲学、文学に目覚め、高村光太郎と交遊し、彫刻を志した。フランスに滞在し近代彫刻の巨匠たちを研究して日本に紹介、日仏の文化交流にも尽力した。本作は両手を交差してそれぞれ肩に置き、膝を立てて座る裸婦像。滑らかな肌の質感表現は見事で、思わずブロンズであることを忘れてしまうほど。文学もよくしたという作者らしく、どこか詩的な雰囲気を漂わせ、女性の美しさが見事に引き出された1点といえよう。
水道秋聖は七尾市出身の日本画家。矢野橋村、福岡青嵐、小松均に師事し、創造展を中心に活躍した。故郷能登を中心とした北陸地方の風景を、大画面に丁寧な筆致で描き続けた。本作で描かれているのは能登の名刹・妙成寺。森の中に屹立する五重塔は、仲秋の名月に照らされてシルエット状に輝く。まるで周りの自然と一体化したようなその姿に、妙成寺の悠久の歴史を感じさせる。
山岸一男は輪島市出身の漆芸家。福光文次郎に師事し、伝統工芸展や伝統漆芸展などで活躍する。漆芸の加飾法の一種「沈金」やそれを発展させた「沈金象嵌」の技法を得意とし、身近な草花や能登の風景などをあたたかな眼差しで表現している。平成30年、「沈金」重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。本作は七尾城址をテーマにした飾箱。城跡にひっそりと咲く紅白の水引草と野面積みの石垣を、「沈金象嵌」の技法を駆使して表現する。亡き父と同所を訪れた際の思い出が創作のきっかけという。
特設コーナー「もっと知りたい!七尾美術館」
過去の展覧会ポスターなどを展示し、これまでの七尾美術館の歩みをご紹介します。
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- 会 期
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2024年10月19日(土)~2024年11月17日(日)
- 時 間
- 9:00~17:00(展示室への入室は16:30まで)
- 休館日
- 会期中無休
- 会 場
- 特別展示室 企画展示室
- 観覧料
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一般800(640)円 大学生・専門学校生640(510)円
- *高校生以下無料
- *( )内は20名以上の団体料金 65歳以上の方は団体料金
- *障害者手帳または「ミライロID」ご提示の方および付添1名は無料
- *常設展もあわせてご覧いただけます
- *加賀本多博物館は別途、観覧料が必要です
- *都合により電子チケットの販売は中止いたしました。
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- 主催
- 石川県立歴史博物館
- 共催
- 石川県七尾美術館(公益財団法人七尾美術財団)
- 特別協力
- 北國新聞社
- 後援
- 七尾市教育委員会、NHK金沢放送局