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いしかわ百万石文化祭2023リーディング事業
令和5年度秋季特別展 御殿の美

近世城郭において政治・儀礼・生活の場であった「御殿」。幾つもの殿舎が連なる壮大な外観、そして障壁画や金工品などが彩る内部は、御殿の主が持つ権威を演出していました。

城郭御殿の大成は江戸時代初期と言われ、室内装飾は絢爛の極致に達しました。慶長・寛永期に遡る名古屋城本丸御殿障壁画および二条城二の丸御殿障壁画は貴重な遺例です。

時に、城郭を襲った災害。江戸城の諸御殿や金沢城二の丸御殿などは幾度も復興に挑み、再建にあたっては先例遵守を第一としながらも、当代の為政者の美意識も反映されたのです。

本展ではこうした城郭御殿をめぐる変遷に注目し、その機能と美のあり方に迫ります。

チラシ(PDF:4.8MB) 出品一覧(PDF:480KB)


【展示構成と主な展示品】

序章 天守から御殿へ

近世城郭にとって重要な役割を果たした天守と御殿。天守が天下を平定する者の武力を示す役割を担ったのに対し、御殿は新しい社会秩序が作られた泰平の世における政治や儀礼の場で、為政者の権威を演出する舞台となりました。序章では、天守と御殿の役割を、城郭の実例を通して紹介します。

「匠明」殿屋集 慶長13年(1608) 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻蔵


幕府の作事方棟梁・平内家に伝わった全五巻から成る木割書。その内の一冊である殿屋集は、天守と御殿について、織田信長と豊臣秀吉という二人の天下人によってそれぞれ創出されたものと起源を記す。


第1章 御殿創建―厳威の顕在

城郭御殿を特徴づけるものとして、豪華絢爛な室内装飾が挙げられます。特に、内部の床(とこ)や壁、襖、杉戸などを彩る巨大な障壁画には、描かれた内容や配置、大きさによって空間に意味を持たせ、そこに身を置く人にメッセージを伝える力がありました。第1章では、城郭御殿の完成形と名高い名古屋城本丸御殿および二条城二の丸御殿の障壁画から、江戸時代初期に大成した権力の視覚化のあり様に迫ります。

また、石川県のシンボルである金沢城では天正14年(1586)頃に天守が、寛永8年(1631)に城の中枢である二の丸御殿が造営されました。創建当初の金沢城は謎に包まれていますが、藩主の書状や初期加賀藩が登用した絵師の作品に注目し、その解明への端緒を探ります。

名古屋城本丸御殿 上洛殿一之間障壁画 帝鑑図[蒲輪徴賢] 狩野探幽筆 寛永11年(1634)名古屋城総合事務所蔵


名古屋城本丸御殿は徳川家康の九男で初代尾張藩主・義直(1600-50)の御殿として慶長20年(1615)に完成した。本作は寛永11年(1634)、三代将軍家光の上洛に合わせて増築された御成御殿である「上洛殿」の一之間を飾る。中国歴代皇帝の為すべき善政と戒めるべき悪業を題材とする「帝鑑図」であり、支配者の理想の姿を示す。狩野探幽(1602-74)が手掛け、大きく余白をとる整理された画面に「瀟洒端麗」と評される探幽作品の特徴がよく表れている。


二条城二の丸御殿 遠侍二の間障壁画 竹林群虎図 狩野甚之丞筆 寛永3年(1626)京都市(元離宮二条城事務所)蔵


二条城二の丸御殿は慶長8年(1603)に徳川家康(1542-1616)が造営、寛永3年(1626)の後水尾天皇(1596-1680)の行幸に合わせて大規模な改築がなされた。本作は昇殿者が控える場である遠侍を飾る。自然界の王である虎は御殿の主たる将軍を守護する存在であるとともに、その虎を従える将軍の力の強大さを誇示している。


石川県指定文化財 前田利家朱印状 高嶋屋伝右衛門・横地藤介宛
〔天正14年(1586)〕6月7日 本館蔵(小宮山家文書)


天正14年(1586)に出されたと見られる6月7日付の朱印状。加賀前田家初代・利家(1538-99)が、天守築城に必要な鉄を輸送するよう越前敦賀の豪商・高島屋に依頼しており、金沢城に天守が創建された時期を推定する根拠となる。


富山県指定文化財 鴛鴦図 慶安元年(1648)頃 狩野安信筆 高岡山瑞龍寺蔵
富山県指定文化財 竹菊雀図 承応4年(1655)頃 狩野探幽筆 高岡山瑞龍寺蔵
富山県指定文化財 達磨図 江戸時代(17世紀) 狩野尚信筆 高岡山瑞龍寺蔵

金沢城二の丸御殿の創建者・前田利常(1593-1658)は加賀前田家2代の利長の祥月命日・5月12日を中心に、その菩提寺である瑞龍寺に様々な宝物を献上した。中でも狩野探幽(1602-74)・尚信(1607-50)・安信(1614-85)三兄弟が手掛けた作品が多く、利常が彼らを重用していたことが窺える。


第2章 御殿復興―先例と御好

 城郭において火事をはじめとする災害は大きなリスクであり、江戸城では本丸御殿が5度、二の丸御殿と西の丸御殿が4度全焼しています。金沢城二の丸御殿も宝暦9年(1759)および文化5年(1808)に火災に見舞われました。

御殿は城において政治や儀礼を執り行い、為政者が住まう重要な空間でしたので、早急に復旧作業が行われました。再建には失われる以前の姿に戻すことを基本方針とする一方で、時の将軍や藩主の好みに合わせて改められる部分もありました。

第2章では城郭御殿の復興をテーマとし、研究が進む金沢城二の丸御殿の文化度造営を中心に、復興に力を尽くした人々の活躍に注目します。


長浜市指定文化財 松虎図(宮川祭颯々館楽屋襖)岸駒筆 享和4年(1804)
長浜市宮司東町自治会蔵


文化5年(1808)に金沢城二の丸御殿が全焼すると、翌年には京で活躍していた絵師・岸駒(1749あるいは1756-1839)と一門を金沢に迎え、障壁画制作を担わせた。昇殿者が控えた「虎の間」には、岸駒によってうずくまる虎や水を飲む虎など計5頭の虎が描かれたことが判明している。本作は岸駒による虎図としては現存唯一と考えられる金碧障壁画であり、毎年5月に滋賀県長浜市宮司町で催行される宮川祭の曳山に用いられる。


大聖寺門跡 宮御殿障壁画 竹鶏図 望月玉川筆 文政8年(1825)大聖寺門跡蔵


望月玉川(1792あるいは1794-1852)は岸駒が金沢へ連れてきた弟子の一人。金沢城二の丸御殿においては表向の杉戸絵を担当した。本作は京都上京区にある天皇家ゆかりの尼門跡寺院・大聖寺宮御殿の襖絵で、玉川の代表作。文政8年(1825)に光格天皇の皇女・普明浄院宮(1820-30)の入寺に合わせて制作された。伸びゆく竹の子と鶏の群れからなる春の生命力に満ちた光景で、写実性と装飾性を兼ね備えた画面は四条派からの影響を思わせる。


二之御丸御殿御造営内装等覚及び見本・絵形 第三冊 井上庄右衛門作 文化8年(1811)金沢市立玉川図書館蔵(加越能文庫)


金沢城二の丸御殿をめぐる最新の研究成果の一つに本史料の発見が挙げられる。加賀藩の大工頭・井上庄右衛門が文化度金沢城二の丸御殿の内装の仕様をまとめ、襖や天井に使用された唐紙や小襖の縁布の実物見本を録するほか、多種多様な飾金具の図面が材質・制作技法とともに記録されている。



令和5年度 文化庁 文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光推進事業



会 期
2023年10月14日(土)~2023年11月26日(日)  ※10月14日(土)のみ11:00開館
時 間
9:00~17:00(展示室への入室は16:30まで)  
休館日
11月6日(月) 
会 場
特別展示室 企画展示室 
観覧料

一般1,300(1,000)円 大学生・専門学校生1,000(800)円

  • *高校生以下無料
  • *( )内は20名以上の団体料金 65歳以上の方は団体料金
  • *障害者手帳または「ミライロID」ご提示の方および付添1名は無料
  • *常設展もあわせてご覧いただけます
  • *加賀本多博物館は別途、観覧料が必要です
  • *電子チケットもご利用いただけます(日時指定なし)。

電子チケットのご案内

販売期間 9月22日(金)~11月26日(日)15時30分まで
料金 一般1,300円
   大学生・専門学校生1,000円

ご注意

  • *65歳以上の方をはじめとする各種割引料金の適用を受けられる方は、電子チケットをご利用いただけません。ご来館当日窓口にてご購入ください。
  • *日時指定券ではございませんので、入館枠の確保はできません。

 
関連イベント
いしかわ百万石文化祭2023オープニングイベント「文化絢爛」館長講演会詳しく見る
記念講演会「襖絵・杉戸絵の画題が語る文化度金沢城二の丸御殿」詳しく見る
石川の歴史遺産セミナー(リレー講義)「加賀藩と公家社会」詳しく見る
ワークショップ「和綴じノートを作って、金沢城のインテリアを学ぼう!」(金沢城二の丸御殿に使われた唐紙と同じデザインで和綴じノートをつくります。)詳しく見る
学芸員による展示解説詳しく見る
 
夜間開館

下記日程で夜間開館を実施予定

9:00~20:00(展示室への入室19:30まで)

10月28日(土)・11月3日(金・祝)・11月4日(土)・11月11日(土)・11月18日(土)・
11月23日(木・祝)・11月24日(金)・11月25日(土)

主催
石川県立歴史博物館・いしかわ百万石文化祭2023実行委員会
企画協力
石川県金沢城二の丸御殿復元整備推進室・石川県金沢城調査研究所
特別協力
北國新聞社
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