令和7年度夏季特別展
未来へつなぐ―能登半島地震とレスキュー文化財―

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本展では能登半島地震の被災地からレスキューされた文化財を展示します。被災建物で埃にまみれていたもの、破損したままの仏像、整理されていない古文書などが多く、まだ調査も十分ではありません。
ではなぜ、地震から約一年半でこのような展覧会を開くのでしょうか。それは、現在も埋もれたままの文化財があるからです。一般の家や、小さな寺や神社にも、地域の歴史を語るさまざまな資料が存在し、救出が及んでいない可能性があります。文化財レスキューについて知り、今からでも救いを求める声をあげてほしい、そのような思いを込め開催します。
【展示内容と主な展示品】
プロローグ 「被災文化財」との出会い
能登半島地震の発災以降、文化財レスキュー事業は全く手探りの状態から始まりました。文化財レスキューの現場では、様々な被災した物品との出会いの連続で、対象となる分野も多岐にわたります。
本章では、被災の中心である能登ゆかりの被災文化財に加え、加賀地方でレスキューされた資料を取り上げます。
志賀町の傾いた納屋・蔵に残された民具 昭和時代
平成5年(1993)の能登半島沖地震の際に出土した珠洲焼の壺
鎌倉時代末期~南北朝時代(14世紀)
第1章 発見された地域の歴史
文化財レスキューは、国や自治体によって文化財として指定されていない資料をも含んで展開されています。そのため、レスキューされた資料の中には、歴史的価値がいまだ定まっていないものもあり、言い換えれば新たな地域の歴史が発見される場ともなっています。
本章では、能登の旧家に伝わった資料群や、襖の中に眠っていた古文書などを展示します。
珠洲市の旧家の襖の中に眠っていた下張り文書 江戸時代後期
能登部(中能登町)の画家・林景村筆「猿猴図額」 昭和時代
第2章 生業からみる能登
能登半島地震では、能登の生業も大きな打撃を受け、その復興が大きな課題となっています。
本章では、海に囲まれた能登において基盤となる漁業や、輪島を中心として栄えてきた伝統産業である漆器産業、さらにはかつて沿岸部の重要な生業であった廻船業や出稼ぎ業を取り上げます。
第3章 能登の宗教文化
能登半島地震では多くの寺社が被災し、寺社や地域で守り伝えてきた仏像、絵馬などの救出は文化財レスキュー活動の大きな軸となりました。
本章では、救出された文化財を通して、その被害の大きさとともに、能登で育まれた宗教文化を守るため今も続く救出活動や応急処置の展開を紹介します。
珠洲市・曹源寺の倒壊した本堂から木造阿弥陀如来坐像をレスキューする様子(2024年7月)
文化財レスキューの過程で存在が確認された木造薬師如来坐像
室町時代・享禄元年(1528) 珠洲市・高照寺蔵
第4章 民具が語る能登
被災した一般家庭からは、地域の生活文化を伝える多数の民具が救出されました。本章では、救出された民具をもとに能登の自然環境と生活についてひもとき、これまで注目されてこなかった地域の民具職人にも焦点を当てます。
志賀町笹波で作られた竹細工 昭和時代
志賀町の網元の家に伝来した婚礼で使用する酒器 昭和時代
エピローグ 災害を未来に伝える
被災文化財とあわせ、この大災害を未来に伝えるためにどのような資料や記録を残していくのかが課題となっています。本章では、過去の災害記録に学びつつ、避難所資料など次代につなぐべき災害資料について考えます。
大正11年犀川大洪水絵葉書 大正時代
正院ひなん所新聞 第1号 令和6年(2024)
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- 会 期
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2025年7月26日(土)~2025年8月31日(日)
- 時 間
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9:00~17:00(展示室への入室は16:30まで)
【夜間開館日】7月26日(土)~8月16日(土)の金曜・土曜は19:00まで開館 - 休館日
- 会期中無休
- 会 場
- 特別展示室 企画展示室
- 観覧料
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一般300(240)円 大学生・専門学校生240(190)円
- *高校生以下無料
- *( )内は20名以上の団体料金 65歳以上の方は団体料金
- *障害者手帳または「ミライロID」ご提示の方および付添1名は無料
- *常設展もあわせてご覧いただけます
- *加賀本多博物館は別途、観覧料が必要です
- *電子チケットもご利用いただけます(日時指定なし)。
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- 主催
- 石川県立歴史博物館
- 特別協力
- 北國新聞社
- 協力
- いしかわ歴史資料保全ネットワーク(いしかわ史料ネット)
- 後援
- 国立文化財機構文化財防災センター、NHK金沢放送局、石川県市長会、石川県町長会