マンガ界の鬼才・永井豪は、社会現象を巻き起こした「ハレンチ学園」、マンガ界の歴史に燦然と名を残す「デビルマン」、巨大ロボットマンガの金字塔「マジンガーZ」など、さまざまなジャンルの作品を世に送り出しました。これまでに発表した作品数は350を超え、その無限ともいえる創造力は、現在も留まることを知りません。
画業50年突破を記念して開催する本展覧会では、デビュー作から最新作まで、貴重な直筆マンガ原稿、カラーイラストなど600点以上を展示。「鬼・悪魔」「ロボット」「ギャグ」「魅力的なヒーロー・ヒロイン」というジャンル別に紹介します。
このほか、「マジンガーZ」や「デビルマン」の世界観をイメージしたエリアや普段は表に出ることのない秘蔵資料なども会場内で見ることができます。また、永井豪デビューまでの道のりをマンガ化した作品、イラスト作品も新規制作、本展覧会で初公開します。永井豪が創り出したイマジネーションの世界を存分にお楽しみください。
みどころ
第一章 鬼と悪魔の黙示録
1971年発表の「魔王ダンテ」では、性善説が覆されるストーリー展開が描かれ、翌年発表の永井豪の代表作のひとつ「デビルマン」に引き継がれています。その中でも、神と悪魔との最終戦争"アルマゲドン"の描写は、黙示録の世界さながらに描かれ、その終末論的な発想は事前に見聞きしたものではなく、物語の展開を進めていく過程で、預言のごとく湧き出たアイデアだといいます。
この章では「デビルマン」をはじめ、幼少期の体験から発想され描かれた鬼の伝奇からSFに昇華する「手天童子」をはじめ、黙示録の1ページを紐解くかのような作品群を紹介します。
第二章 ヒロイン・ヒロイックサーガ
永井豪の描くヒロイン・ヒーローたちは、完全無欠ではありません。時には傷を受け、血を流し、時にはその命を落とすこともあります。物語も一見ギャグかと思いきや、シリアスな展開が直後に訪れ、その刹那的な演出は読者に衝撃を与えます。
この章では、悪の秘密結社パンサークローと戦うヒロインを描いた「キューティ―ハニー」、関東地獄地震後の荒廃した世界に現れた謎の大男をめぐる巨編「バイオレンスジャック」、世の大人たちも巻き込み一大センセーショナルを巻き起こした「ハレンチ学園」など、物語の軸を牽引するヒロイン・ヒーローたちをご覧いただきます。
第三章 笑劇奇譚
永井豪のギャグマンガは、ドタバタ、エロ、グロ、破壊、不条理、ナンセンス、非常識、パロディーとおよそ考え付く限りの、子どもたちが大好きな不謹慎さに彩られています。ストーリーマンガでは執筆に時間がかかるが、ギャグだと短い時間で描けるという理由で描かれた「目明しポリ吉」でデビュー。以降、それまでのマンガ界のタブーを次々と破り、マンガ界を大きく変えていくことになります。
この章では「目明しポリ吉」をはじめ、「けっこう仮面」「キッカイくん」「オモライくん」のほか、師匠の石ノ森章太郎の「ジュン」のパロディー作「豪ちゃんのふぁんたじぃ・わらうどバン」など、数々の笑劇作を紹介します。
第四章 魔神伝説
世界初の人が搭乗して戦うロボットマンガ「マジンガーZ」は、1972年誕生します。全長18メートル、超合金Zで包まれたそのボディーは、「神にも悪魔にもなれる」ほどの力を秘めた、まさに“魔神”です。
「マジンガーZ」のヒットにより、当時低迷期と言われていたロボットマンガは一気に再熱。「グレートマジンガー」「UFOロボ グレンダイザー」など、次々と誕生した“魔神”たちは、日本のみならず世界中を熱狂させ、ロボットヒーローというジャンルを確立してゆきます。
この章では、国内外のロボットマンガ・アニメの概念を大きく変えた“魔神”の数々を見ていただきます。
第五章 OTHER WORKS
永井豪はマンガ以外の仕事も数多く手がけています。文章による単著書籍の数々、エッセイ、絵本、広告などの商業イラスト、小説の挿絵、レコードやCDのジャケット、キャラクターデザイン、映画監督などその活動は幅広いです。そんな多彩な仕事の中からいくつかを紹介します。
第六章 現在進行形
画業50周年を突破した2018年。永井豪は相変わらず連載で新作を描き、精力的に執筆を続けています。一方「デビルマン」の新作アニメーションが全世界にネット配信され、「マジンガーZ」の劇場版が公開され、「キューティーハニー」がTVアニメの新シリーズとして蘇りました。いまもなお多くのファンに愛され、さらに新しいファンも増え続けている現役作家なのです。「アイデアはいくらでも出てくる」「描きたいものはまだたくさんある」という永井豪の言葉を聞く限り、50周年は単なる通過点でしかないことがわかるでしょう。